051140 ランダム
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銀の月 蒼の風 黎明の海

銀の月 蒼の風 黎明の海

Act.13







 信じたくない。仲間が裏切っただなんて。まして、それが僕らのボスだったら尚更だ。


どうして、裏切ったんですか。貴方にとって、僕達は一体何だったのですか?


僕は、如何したら良いんですか。教えてくださいよ、シャリア!!!







Act.13







「大変な事になったね。ラビ、誰も入ってこないように見張っててよ」


「ヘーイ」





 コムイと誰かの声がして、アレンが眼を覚ました。眼を覚ますと、其処には武器(?)を構えた


コムイが居た。アレンが眼を覚ましたのを見て、コムイはにこやかに「眼が覚めちゃったかい?


とか言っている。それを聞いて、アレンは顔を蒼くする。





「コムイさん?! え? 此処何処?!」


「ここ? 病院だよ」





 コムイは町の外で待機していたファインダーから「街が正常化した」と連絡がはいったらしい。


それで、アレンの左手が壊れたのを知って教団から此処まで来たのだと。





「実はね、これから君達には本部に戻らず、このまま長期任務についてもらわなきゃならなくなったんだよ」


「え?」


「詳しい話はリナリーが目覚めた時に一緒にするよ」





 リナリーは神経へのダメージが酷く、目覚めるのにあと少し時間が掛かるらしい。


ラビというエクソシストがアレンにそう伝えた。あと、ミランダからの伝言をアレンはラビから聞いた。


彼女はエクソシストとして、黒の教団に入るようだ。それを聞いて、アレンはホッとした。


自分達の事に巻き込んでしまった事に罪悪感を感じていたのだ。





「コムイさん、聞きたいことがあるんです」


「分かっているよ。その前に、腕を修理しちゃおうかv」


「え゛」





 反論しようとしたが、時既に遅し。イノセンスに麻酔を打たれてしまった。そして、直ぐにドリルを持って


アレンの腕を修理し始めた。アレンはあまりの痛さに、口から魂を出している。部屋の入り口に立っていたラビも


アレンの腕を至極楽しそうに修理しているコムイ見て顔を蒼くした。そして、思った。


寄生型じゃなくてよかったさ」と。暫くして、アレンの腕の修理が終わった。


まだちょっと、白目剥いてるが大丈夫だろう。 <良いのか?!





「だ、大丈夫さ?」


「は、はい......多分。あなたは?」


「おいらはラビさ」


「あ、僕はアレンです。アレン・ウォーカー」


「宜しくさ。あ、そうそう。アレン、じじいが呼んでたから行くさ」


「は?」





 アレンは頭上に疑問符を浮かべていたが、颯爽とラビに拉致されていった。コムイはそんな二人を


苦笑して見送った。そして、辛そうに寝ているリナリーを見つめていた。







* * *







「これは奇っ怪な。潰されていた左目が再生し始めている」





 アレンの左目はあれからゆっくりと再生していた。何故かは分からない。でも、一つだけ


分かる事がある。それは、父親であるマナがアレンを生かそうとしている事。





「この速さなら、三・四日で元に戻る。......アレン・ウォーカー。『時の破壊者』と予言された子供だね」


「あ、はい」


「我らはブックマンと呼ばれる相の者。理由あってエクソシストとなっている。あちらの小僧の名はラビ。


 私の方に名は無い。ブックマンと呼んでくれ」





 アレンはブックマンと握手を交わした。ブックマンは、道具を片付けて行くから


先にコムイの所に行けとアレンに言って、部屋から追い出した。ポツンと残されたアレンは


ちょっと寂しくなりながらもコムイの所へ戻る。左目が元に戻るって聞いてアレンは安心した。


ずっと、不安だったから。でも、今は他の事が気になって仕方が無い。それは、ノアの事。


そして、シャリアの事だ。何故、裏切ったのか。アレンは不思議でならなかった。


スパイだったのか、それとも、伯爵に勧誘されて行ってしまったのか。アレンの頭の中で


シャリアの事が浮かんでは消え、浮かんでは消えの繰り返しであった。





「.........アレンくん、扉の前で唸っていないで入りなさい」


「あ、コムイさん。......すみません」


「何に対しての謝罪か分からないけど、とりあえず、座って」





 アレンは積み上げられた書類等を崩さないように部屋に入った。書類が高く積み上げられているので


リナリーが埋まっているように見える。コムイは先程まで書いていた書類を纏めている。


アレンはそんな忙しそうなコムイの後姿を見て、疑問に思っていたことを聞く。





「コムイさん。忙しいのに如何して態々外に出て来たんですか? 僕やリナリーのため......じゃないですよね」





 そこで、コムイはアレンの顔を見る。その表情は困っているようにも見えた。


アレンはその表情で全てを悟った。コムイは知っていたのだ。ノアという存在が現れる事。


それと、シャリアが近いうちに裏切る事を。





「どう.......して。どうして、言ってくれなかったんですか?! ノアの一族って何ですかっ」










* * *









「ロード。此処が伯爵の部屋?」


「うん。そうだよぉ。此処で何するの、シャリア姉ぇ」


「伯爵を此処で待とうと思ってな。ロードも此処で待つか?」


「そうだねぇ~ 僕も此処でシャリア姉と一緒に居るぅ」


「クスクス ロードは甘えん坊だな」


「だって~~」





 ロードの頭をポンポンと撫でてやれば、嬉しそうに眼を細める。それが可愛くてシャリアは微笑む。


その時、扉の向こうで物音が聞こえた。シャリアが「誰だ」と問うと、扉を開けて紳士のような物腰の


男が入ってきた。





「あ、ティッキーじゃん。やっほー」


「ロード、お前また勝手に人間の人形を連れ帰ったのか? しかも、意識あんじゃん」


「違うよぉ~ シャリア姉は、僕等の新しい家族だもん。ネー?」


「クスクス あぁ。そうだな」


「へぇ~ そりゃ、驚いたな。にしても、シャリア...で良いか? 美人さんだな」





 ロードはそれを聞いて、シャリアに抱き付いた。ティキからシャリアを守ろうとしているのだ。


そんな可愛い行動にシャリアは微笑み、ロードを抱きしめ返した。元々、シャリアはこういった


小動物系に弱い。というか、可愛い物に眼がないのだ。





「ティキ、お前も此処で伯爵を待つか?」


「ん~、暇だしそうしよっかな。カードでもするか?」


「あぁ。良いぞ。ロード、剥れていないで私の膝に来い」





 ロードはシャリアがティキを誘った事でティキに嫉妬していた。ロードはジーッとティキを睨んで


シャリアの膝に座った。その際も、シャリアはクスクスと笑みを零していた。睨んでくるロードを


ティキは軽く無視してカードを繰る。





「ロード、そんな顔をしていたら折角の可愛い顔が台無しだ。お前は笑っていろ」





 その言葉にロードは赤面して俯く。唯でさえ低いシャリアの声音なのに、それを耳元で囁かれたら


堪ったものではない。まぁ、シャリアは女なのだが顔が中性的な為、よく間違えられる。


それに、声も幾分か低い。これが、本当の声音なのかは分からないが、女性が赤面するには


十分な音なのだ。透き通ってて、スッと耳に入る。綺麗な声音。シャリアはニコリと笑って


ロードの頭を撫でる。





「(あのロードが赤面してるって事は、かなり恥ずかしいセリフを言われたと見た)」


「もう、準備はいいのか?」


「あ、あぁ。んじゃ、勝負だ」







 それから、シャリアとティキはカードゲームをし続けた。長い時間ずっとしていたので


ロードはいつの間にか寝ていた。勝負の結果は言うまでもなく、シャリアの勝ちだ。


しかも、いかさま等は一切していない。凄い強運の持ち主のようだ。そんなシャリアに流石のティキも


お手上げだった。





「くぁ~~ 負けた~」


「ティキは良い所まで来るんだが、此処で深く読みすぎる。だから、負けてしまうのだよ」


「あぁ、なるほど」





 ティキは今、シャリアにカードの手解きをして貰っている。どうしても、勝ちたいようだ。


そんな負けず嫌いのティキにシャリアは自然と笑みが広がる。フワリとした優しい笑みを


浮かべるシャリアにティキもロードと同じく赤面する。





「(こりゃ、ロードの気持ちが良く分かるぜ)...此処はこうで良いんだよな?」


「クスッ あぁ、そうだ。それで、こうすれば勝てたかもな」


「~~~~っ」


「クスクス まぁ、頑張れ」


「最後にもう一回っ」


「それは、また今度だな。伯爵が帰ってきたぞ」


「は?」





 ティキはじっと扉を見つめるシャリアに首を傾げる。物音が一切しないのに


どうして伯爵が帰って来ただなんて分かるのか不思議でならなかった。そんなティキの心情に


気付いたのか、シャリアが空中を指差す。すると、そこに、さっきまではなかった扉が現れた。





「なっ」


「ほらな?」





 シャリアが指差した所に、扉が現れたのでティキは驚きのあまり眼を点にして扉を見つめた。


その扉が開き、千年伯爵が出てきた。そして、ピタリと固まった。何故、此処にシャリアが


居るのだろうかと考えているのだろう。伯爵は本当に自分の部屋か、辺りを見渡して確かめた。





「クスクス 伯爵、お邪魔しているよ」


「どうして、お前が居るのですカ?」


「仲間になってあげようと思ってね」


「どうしテ......」





 シャリアは膝で眠っているロードをティキに預けて立ち上がった。そして、伯爵と向かい合う。


伯爵は、シャリアの方が実力が上だと分かっているので、内心冷や汗ダラダラだ。


それに気付いているのか、シャリアは伯爵に安心させようと優しく微笑む。そして、伯爵の問いに答えた。





「それは至って簡単。私はこの腐りきった世界が嫌いだから」


「ですが、貴方は私を敵として攻撃してきましタ」


「あぁ。それは...申し訳ない。エクソシストに怪しまれると厄介だったもので」





 すまなそうに誤るシャリアに伯爵は考えるように唸る。チラリとシャリアを窺うと


シャリアの紅い眼が曇っていた。本当に悪かったと思っているようだ。それから伯爵は


ティキの方にも視線をやる。ティキはジッと伯爵を見つめるだけで何も言わない。





「ふ~む まぁ、良いでしょウv ロートもティキも懐いているようですシv」


「ありがとう、伯爵」





 シャリアはニコリと笑って、伯爵の右頬に軽く口づけをする。シャリアはスッと離れてティキから


ロードを受け取る。その際に、シャリアは「有り難う」とティキに言ったが、口づけまではしなかった。


ティキはちょっと伯爵が羨ましかった。ティキが伯爵を見ると、ボーッと突っ立っていた。





「お~い、伯爵?」


「クスッ 伯爵、ティキが困ってるぞ」


「っあ、す、すみません、ティキ。どうかしましたカ?」


「どうかしてるのは伯爵だろ? どうしたんだよ、ボーッとしてさ」


「ボーッとしてましたカ?」


「してたよ。まぁ、理由は分からんでもないがな。クスクス」


「あぁ~、ナルホドね。んじゃ、邪魔者は退散するとしようかな。ロード、預かるよ」


「あぁ、有り難う。ティキ、これから宜しくな」


「ん? あぁ、宜しくさん。じゃあね、シャリア姉さん」





 ティキはウィンクして扉から出て行った。後に残ったのは、おいしそうに紅茶を


飲んでいるシャリアと、未だ頭の整理が付いてない伯爵だけだ。レロは煩いからティキが


連れて行ってくれたようだ。伯爵は考えるような仕草をやめて、シャリアの向かいに座った。


それを見て、シャリアは伯爵に紅茶を入れてやる。





「はい。どうぞ」


「ドウモ。シャリアさん、如何しテ、エクソシストに?」


「貴方の資料が無いか調べていた」


「在りましたカ?」


「私が欲していたのは無かった」


「貴方が欲していた物とハ?」


「.........その呪い。誰に掛けられた?」





 ピクリと反応した。そして、伯爵の殺気が部屋中を駆け巡る。シャリアはそんな伯爵を


正面から受け止める。シャリアが何故、伯爵の資料を欲したか。それは、伯爵の呪いを解く為。


シャリアは、遥か昔、伯爵と会った事があった。あの時の伯爵は優しく、紳士的で


シャリアは知らず知らず惹かれて行った。だが、暫くして伯爵の姿を見る事が無くなった。


シャリアは瞬時に理解した。どこか、他の地へ移ったのだと。だが、違った。


伯爵は人間に捕らえられ、呪いを掛けられた。外見が異端なるものへと変わる呪いを。


だから、シャリアは見つけられなかった。ずっと、ずっと探していた。何年も、何十年も、何百年も渡って


探し続けた。そして、やっと目ぼしい人を見つけた。それが、千年伯爵。







 長年の時を得て、見つけた異端なる愛しき人。しかし、その者は己を愛していてくれた者の事を


知らなかった。だが、聖女は言った。「それでも良い」と。「あの人が幸せならば、それで良い」と。


しかし、彼の者は呪いを受け、負の感情のどん底まで堕ちた。そして、人が変わり


彼の者は、己に呪いを掛けた者を恨んだ。恨み、呪った。彼の者は憎しみを全の人間に向けた。


聖女は彼の者の心の叫び声に気付き、天より舞い降りた。愛しき者を助ける為に


仲間を裏切り、守護者をも出し抜いた。聖女は助けたいという一身で力を高めた。


その結果、聖女は“神”と等しき力を持った。その力を、愛しき者を助ける為にと聖女は立ち上がった。


さぁ、世に響く鎮魂歌を聴け。己が犯した罪を知るが良い。罪を我が裁こうぞ。



























































06/01/13


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